電子・陽電子の対消滅と対生成 ― 電荷と質量をつなぐ公式 ―

Space-Time Unit (ST unit) / Electron - Positron Annihilation and Pair Creation

Physics · Unit systems · Annihilation and Pair Creation

私がウェスタン・ワシントン大学在学中に、最も強く「物理」を肌で感じた実験が、電子・陽電子の対消滅実験である。円周上に二台のシンチレーターと光電子増倍管を対向配置し、 その中心に陽電子を放出する源を置く。放出された陽電子は、周囲の空気中(あるいは物質中)の電子と相互作用しながら減速し、やがて電子と結合して対消滅(annihilation)を起こす。 このとき、電子と陽電子の静止質量エネルギーは二本のガンマ線へと変換され、それぞれ 0.511 MeV のエネルギーをもって、ほぼ正反対方向(180°逆方向)に放出される(Fig.1)。

Electron-Positron Annihilation geometry
Fig.1 電子・陽電子対消滅と同時計測の概念配置.

この 0.511 MeV という値は、物理学の中でも最もシンプルで美しい公式の一つとされる、アインシュタインの式

\[ E = m_e c^2 \]

によって与えられる電子の静止質量エネルギーである。ここで me は電子質量、c は光速、E は静止質量エネルギーを表す。このきわめて単純な実験だけで、私たちはアインシュタインの 最も有名な公式を、実体験として目の前に見ることができる。また、180度反対方向へ飛び去る二つの光子という構造、さらに、電子運動がもつ円的な世界と、光子運動がもつ線形的な世界の対比においても、 この実験は物理に内在する対称性の概念を直観的に表現している。

対消滅と対をなして存在する現象が、対生成(pair production)である。これは二つの光子から電子と陽電子の対が生成される過程であり、電荷も質量ももたない光子が、電荷と質量をもつ粒子へと 転化する現象である。アインシュタインの公式は、質量とエネルギーの関係を示すものであるが、そこに電荷の関係は現れない。

私たちは、光子・電荷・質量の関係を同時に表現する公式を提唱する。その過程において、ニュートン力学における重力の公式と、クーロン力の公式を出発点とし、 万有引力定数 G、真空の誘電率 ε0、真空の透磁率 μ0 の役割を再検討する。その結果、キログラムとクーロンという単位は、それぞれ

\[ \mathrm{kg} \;\rightarrow\; \mathrm{m^3/s^2}, \quad \mathrm{C} \;\rightarrow\; \mathrm{m^2/s} \]

という形に変換されることを示す(Reference)。

私たちはこの単位体系を Space-Time(ST)単位系と総称する。この単位系において、電子質量 me は m0 に、素電荷 e は e0 に変換される。 その結果、光子・電荷・質量の間には、次の極めて単純な関係式が成立する。

\[ m_0 = e_0 c \]

この式は、アインシュタインの公式と同様にきわめて簡潔でありながら、質量・電荷・光という物理の根源的構造を表現する公式である。

Reference

※ 本ページは、理論の入口としての要約です。数式の詳細・体系的議論は上記文献をご参照ください。

Space-Time Unit System for Unifying Gravitational Mechanics, Electromagnetism and Quantum Physics