自然単位系の思想
自然単位系とは、1900年にマックス・プランクが提唱した「文明・観測者・測定環境に依存しない、万物に共通の単位系」という思想に端を発します。 プランク単位系は、光速 c、プランク定数 ħ、万有引力定数 G、ボルツマン定数 kB をすべて「1」と定義することにより、プランク長・プランク時間・プランク質量・プランク温度がすべて「1」となる単位系です。
これは、物理法則を人為的単位から切り離そうとする、極めて美しい発想でした。しかし同時に、これらの定数の組み合わせが物理的に何を意味しているのかは、必ずしも明確ではありません。 また実際の物理学では、分野ごとに「何を1とするか」は異なり、自然単位系は一意には定まっていません。私たちはこのプランク単位系の思想を継承しつつ、物理的解釈を内包した新しい自然単位系を提唱します。
Space-Time Unit(ST単位系)
物理学の発展過程において、kilogram と coulomb が先に定義され、それらの整合性を保つために、万有引力定数 G、真空の誘電率 ε₀、真空の透磁率 μ₀ が後から導入されました。 しかし、ニュートンの万有引力の法則およびクーロンの法則に現れる G, ε₀, μ₀ の役割を次元的に再検討すると、kilogram と coulomb という単位は、それぞれ kg → m³/s²、C → m²/s という時空量の派生単位であることが分かります。私たちは、この単位体系を Space-Time(ST)単位系と総称します(Reference参照)。
SI単位からST単位への変換
ST単位系では、kilogram と coulomb は、それぞれ μ変換子および ε変換子によって変換されます。SI単位の電子質量 mₑ と素電荷 e を、ST単位の電子質量 m₀、素電荷 e₀ に変換すると次式を得ます。
万有引力定数 G は分母に kilogram を含むため、ST単位系では無次元定数 β₀に変換されます。
また、真空の誘電率 ε₀ と真空の透磁率 μ₀ は、幾何と定義定数である光速 c のみで表されるため、ST単位系では敢えて新しい記号は付与しません。
ST単位の無次元定数
無次元定数 β₀ は、微細構造定数の逆数 α₀ と並び、異なる物理領域の比率を定義する重要な定数です。私たちは β₀ を Gravitational–Electromagnetic Ratio と呼びます。
Gravitational–Electromagnetic Ratio
※ ここで \(k\) はクーロン定数 \(k = \frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\) を表します。
対称性の観点から、微細構造定数の逆数 α₀ をQuantum–Electromagnetic Ratio と総称します。
Quantum–Electromagnetic Ratio
プランク定数のST変換
ST単位系において ħ に α₀ を吸収させることも可能ですが、Gravitational–Electromagnetic Ratio との対称性を保つため、ST自然単位系では ħ₀ と α₀ を切り分けます。 したがって、ST単位系におけるプランク定数は
と定義されます。
ST単位系における物理量の生成構造
結果としてST単位系では、素電荷 e₀ と光速 c のみから、すべての物理単位を構成できます。この構造において光速 c は単なる定数ではなく、 作用子のように振る舞いながら物理量の階層を形成します。
| Quantity | Expression | Unit |
|---|---|---|
| Time | e₀ c-2 | s |
| Length | e₀ c-1 | m |
| Charge | e₀ | m² / s |
| Mass | e₀ c | m³ / s² |
| Momentum | e₀ c2 | m⁴ / s³ |
| Energy | e₀ c3 | m⁵ / s⁴ |
Length(e₀c⁻¹)は必然的に古典電子半径 r₀ と一致し、Time(e₀c⁻²)は、光速で古典電子半径を進む時間 t₀ に対応します。 この基本長と基本時間から、光速c, 素電荷e₀, 電子質量m₀, プランク定数ħ₀, 電子質量エネルギーE₀ = m₀c²が必然的に定まります。
| Constant | Expression | Unit |
|---|---|---|
| c | r₀ / t₀ | m / s |
| e₀ | r₀² / t₀ | m² / s |
| m₀ | r₀³ / t₀² | m³ / s² |
| ħ₀ | r₀⁵ / t₀³ | m⁵ / s³ |
| E₀ = m₀c² | r₀⁵ / t₀⁴ | m⁵ / s⁴ |
ST自然単位系
したがって、基本長 r₀ と基本時間 t₀ を「1」と定義するだけで、光速・素電荷・電子質量・プランク定数・電子質量エネルギーが同時に「1」となる自然単位系が構成されます。
古典電子半径を基準長とする合理性
基準長として古典電子半径 r₀ を採用すると、主要な物理定数は微細構造定数の逆数のべき乗として表されます。
| Quantity | Value |
|---|---|
| Classical electron radius | 1 |
| Compton length | 2π α₀ |
| Bohr radius | α₀2 |
| Inverse Rydberg constant | 4π α₀3 |
このようにST自然単位系では、物理的意味を失うことなく、自然な形で基本物理定数が「1」となり、物理法則は幾何構造と無次元定数 α₀ および β₀ のみによって記述されます。
Reference
※ 本ページは、理論の入口としての要約です。数式の詳細・体系的議論は上記文献をご参照ください。
Space-Time Unit System for Unifying Gravitational Mechanics, Electromagnetism and Quantum Physics