現在、国際単位系(SI)においては、キログラムとアンペアが基本単位として定義されています。
しかし、この分類は人類が測定上の利便性に基づいて定めた制度的区分であり、自然科学的必然性を意味するものではありません。
本稿では、質量と電荷は基本量ではなく、より根源的な時空的関係から導かれる構成量であることを論じます。
さらに本稿は、万有引力定数 \(G\)、真空の誘電率 \(\varepsilon_0\)、および真空の透磁率 \(\mu_0\) が、
キログラムおよびクーロンという人為的単位体系の整合性を保つために導入された比例定数であり、
自然界に固有の本質定数ではないことを示します(Reference参照)。
歴史的には、まず質量の単位が定められ、次に独立に電荷の単位が定義されました。
その後、物理公式の整合性を保つために、万有引力定数 \(G\)、真空の誘電率 \(\varepsilon_0\)、真空の透磁率 \(\mu_0\) が導入されました。
しかし、ニュートンの重力ポテンシャルエネルギーとクーロンポテンシャルエネルギーの公式を再検討すると、
キログラムおよびクーロンという単位が本質的に人為的に定められたものであることが明確になります。
ニュートンの時代やクーロンの時代は、重力とクーロン力の公式は比例式でした。
なお、本研究ではスカラー量の比較による次元解析を目的としているため、符号やベクトル表記は省略しています。
\[ F_g \propto \frac{m M}{r^2} \qquad F_e \propto \frac{q Q}{r^2} \]
これらの式は同型の構造をしており、物理法則のあいだにある深い類似性を示唆しています。 現在用いられている重力ポテンシャルエネルギーの式は、次のように表されます。
【現在の重力ポテンシャルエネルギーの公式】
\[ E = \frac{G\,m\,M}{r} \]
マクスウェルは『電気と磁気に関する論考(A Treatise on Electricity and Magnetism, 1873)』の冒頭で、 「もし質量を天文学的単位系において“重力の強さ”によって定義するならば、質量 \(M\) の次元公式は \(L^3/T^2\) になるだろう」 と述べています。
実際に、質量 \(m, M\) の単位である kilogram に万有引力定数 \(G\) を吸収させると、 質量 \(m'\) と \(M'\) の単位は \(m^3/s^2\) の次元へと変換されます。 なお、本稿ではスカラー量の比較による次元解析を行うため、符号は省略します。
【万有引力定数 \(G\) を吸収させた重力ポテンシャルエネルギー】
\[ E' = \frac{m' M'}{r} \]
ここで、重力ポテンシャルエネルギー\(E'\)自身も分子に kg を含むため、同様に万有引力定数 \(G\) が吸収されます。
この時点で、質量の単位は\(m^3/s^2\)になり、エネルギーの単位は\(m^5/s^4\)になります。
同様に、クーロンポテンシャルエネルギーの次元解析を行います。現在用いられているクーロンポテンシャルエネルギーの式は、次のように表されます。
【現在のクーロンポテンシャルエネルギーの公式】
\[ E = \frac{k\,q\,Q}{r} \]
万有引力定数 \(G\) をキログラムの単位に吸収させたのと同様に、 人為的な変換定数であるクーロン定数 \(k\) の平方根をクーロンの単位に吸収させれば、 形式的にはガウス単位系(cgs単位系)の式が得られます。 しかし、クーロン定数 \(k\) の内部構造を詳しく見ると、次のように分解できます。
\[ k = \frac{1}{4\pi \varepsilon_0} = \frac{\mu_0\,c^2}{4\pi} \]
上式の右辺が示すように、クーロン定数を分解するとその中に光速 \(c\) が含まれていることが分かります。 光速 \(c\) は普遍定数であるため、本研究ではクーロンの単位には吸収させません。 また、真空の透磁率 \(\mu_0\) の分子にはキログラムの次元が含まれているため、 万有引力定数 \(G\) も同時に吸収させます。
【人為的定数を吸収させたクーロンポテンシャルエネルギー】
\[ E' = \frac{q' Q'\,c^2}{r} \]
この段階で、クーロンの単位は \(m^2/s\) に変換され、 キログラムおよびクーロンという基本単位は消滅します。 その結果、すべての量は空間と時間のみから構成される派生単位へと還元されます。
ここから、素電荷と電子質量の関係式が導かれます。
\[ m_e' = e'\,c\,\beta \]
ここで \(\beta\) は無次元定数であり、重力ポテンシャルエネルギーとクーロンポテンシャルエネルギーの比の平方根として定義されます。
さらに、クーロンを \(m^2/s\) へ変換する際の変換子の分子に万有引力定数 \(G\) の平方根が含まれていることから、体系はさらに単純化できることが分かります。
すなわち、キログラムの単位にあらかじめ \(\beta^2\) を吸収させることで、
質量変換子 \(\mu\) と電荷変換子 \(\varepsilon\) からなる最終的な変換体系が完成します。
興味深いことに、この過程を経ると、最も測定精度の低い定数である万有引力定数 \(G\) は体系から自然に消去されます。
このとき、質量変換子 \(\mu\) と電荷変換子 \(\varepsilon\) は次のように定義されます。
\[ \mu = \frac{\mu_0}{4\pi}\left(\frac{e\,c}{m_e}\right)^2 \]
\[ \varepsilon = \frac{\mu_0}{4\pi}\left(\frac{e\,c}{m_e}\right) \]
したがって、新単位系における電子質量 \(m_0\) と素電荷 \(e_0\) は、次のように定義されます。
\[ m_0 = \mu\,m_e \]
\[ e_0 = \varepsilon\,e \]
私たちはこの新しい単位体系を Space-Time(ST)Unit system と総称します。 ST単位系では、SI単位系のもとでは見えにくかった物理構造が明確に浮かび上がります。 さらに、この体系のもとでは、アインシュタインの質量・エネルギー等価性を想起させる、 素電荷と電子質量の極めて単純な関係式が成立します。
\[ m_0 = e_0\,c \]
私たちはこれまで、キログラムやクーロンが基本単位であることをほとんど疑ってきませんでした。 しかし、人為的に導入された比例定数を見直し、電子レベルから単位体系を再構成するだけで、 これまで見えなかった物理法則の側面が、より鮮明に現れてきます。
Reference
※ 本ページは、理論の入口としての要約です。数式の詳細・体系的議論は上記文献をご参照ください。
Space-Time Unit System for Unifying Gravitational Mechanics, Electromagnetism and Quantum Physics